インセプションデッキ

インセプションデッキとは

インセプションデッキとは、プロジェクトの全体像(目的、背景、優先順位、方向性等)を端的に伝えるためのドキュメントです。ThoughtWorks社のRobin Gibson氏によって考案され、その後、アジャイルサムライの著者 Jonathan Rasmusson氏 によって広く認知されるようになりました。

インセプションデッキについては、Jonathan氏のブログ「The Agile Inception Deck」にて説明を読むことができます。


▲Jonathan氏が作成したインセプションデッキのひな形

インセプションデッキ(Inception Deck)を直訳すると「最初のデッキ(カードの束)」という意味となり、アジャイルプロジェクトにおける「プロジェクト憲章」に近い意味合いを持ちます。

プロジェクト憲章とは

PMBOKにおけるプロジェクト憲章(Project Charter)は、プロジェクトに関する基本的な取り決めを記述する正式文書です。具体的には、以下のような内容を記述します。この段階ではプロジェクトマネージャが決まっていないため、より上級の管理者によって作成されます。

  1. プロジェクト概要(目標、成果物)
  2. プロジェクトの背景(背景となるビジネスニーズ)
  3. プロジェクトの目的と妥当性( 投資効果)
  4. プロジェクト要求事項(ステークホルダーの要求事項)
  5. プロジェクト環境( 前提条件、制約条件、関連部門 )
  6. プロジェクト・スケジュール(暫定マイルストーン、完了期限)
  7. プロジェクト資源(体制、予算)
  8. プロジェクトマネジメント基本方針
プロジェクトを始める前にこれだけのことを明確化しておかないと、いい加減にプロジェクトが立ち上がり、そのままプロジェクトが進んでしまう危険性があります。
大規模プロジェクトであればプロジェクト憲章の作成に十分な時間を割り当てることができますが、小中規模のプロジェクトでは、プロジェクト憲章の作成に時間を取れない可能性があります。また、提案書、企画書、RFPなどが同じ役割を果たすこともあります。

インセプションデッキを作成する理由

PMBOKで定義されているプロジェクト憲章の作成には長い時間がかかってしまいます。また、契約や調達に関する情報が多くなり、チームのメンバに見てもらえなかったり、読んでも理解が困難になる可能性もあります。
そこで、コミュニケーションに重きを置くアジャイルプロジェクトにおいては、インセプションデッキを用いてプロジェクトに対する期待をマネジメントします。

インセプションデッキの構成

インセプションデッキは10個の質問と答えから構成されます。

  1. 我われはなぜここにいるのか(Why1)
  2. エレベーターピッチを作る(Why2)
  3. パッケージデザインを作る(Why3)
  4. やらないことリストを作る(Why4)
  5. 「ご近所さん」を探せ(Why5)
  6. 解決案を描く(How1)
  7. 夜も眠れなくなるような問題は何だろう(How2)
  8. 期間を見極める(How3)
  9. 何を諦めるのかをはっきりさせる(How4)
  10. 何がどれだけ必要なのか(How5)

この10個の質問は、顧客(ステークホルダー)と開発チーム間で認識を合わせるべき重要な項目といえます。

インセプションデッキの大きな特徴は、1つの質問が1枚のカード(パワーポイントのスライド)で構成されることです。そのため、わずか10枚のスライドで、プロジェクトの方針と概要を理解できるようになります。また、数時間~数日で作成できるので、素早くステークホルダーとすり合わせをして、プロジェクトを立ち上げられるようになります。

インセプションデッキの詳細は書籍「アジャイルサムライ」を御覧ください。

インセプションデッキの雛形(テンプレート)

インセプションデッキの雛形は、以下のサイトにて日本語に翻訳したものが公開されています。

顧客、チームともにアジャイル開発を行うことに問題が無い場合は、上記の資料を利用してインセプションデッキを作成すると良いでしょう。

非アジャイルプロジェクトでのインセプションデッキの雛形

インセプションデッキは、プロジェクトの全体像を理解する上で、大変役に立つツールです。そのため、アジャイルプロジェクトか否か関係なく、様々なプロジェクトで活用して良いと思います。ただ、インセプションデッキの構成はアジャイル色が強すぎて、アジャイル開発の知識が少ない顧客や上司に見せるには抵抗がある場合があります。

そこで、一般的なプロジェクトでも採用できるテンプレートを以下に作成しました。

インセプションデッキのひな形(日本的なプロジェクトでのテンプレート)
▲PPTX、パワーポイント2007形式

インセプションデッキを初めて作る人でもわかるように、スライドのノートに、スライド作成時に注意するべきポイントを記載しています。

最後に

インセプションデッキは、アジャイル開発のツールとして紹介されていますが、プロジェクトの種類に関わらず利用することができます。インセプションデッキの内容を検討するだけで、認識のずれを減らすことができ、円滑にプロジェクトを立ち上げることができます。作成した後も、定期的に更新をして、見える場所に張り出しておくことで、プロジェクトの方向性を正確に共有することができます。

興味を持たれた方は、一度ダウンロードして、記入、印刷してみて頂けると幸いです。

参考資料


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