「NEXTSCAPE Advent Calendar 2022」の11日目の記事です。
🎄この記事は
インターネットを少し知っているので、インターネットをどう認識すればいいのかについて書きます。Azureの記事を書こうとも思ったんですが量的に書ききれなくなったので年末らしくポエムを書きます。
🎄インターネットって何だったのか
インターネットは、遠くの人にとんでもない速度で情報を伝えるために構築されました。インターネットは情報伝達以外のことを主目的とせず、今も大量の情報を考えられないような速度でやりとりし続けています。
はじめは大学と大学を結び通信するために使用され、次第に規模を大きくしながら我々消費者が商用利用できるようになり、様々な技術者の尽力のもと高品質低価格で使用できるよう進化していきました。
それまでのテレビ、ラジオ、新聞、電報、伝書鳩、手旗信号等をはるかに凌駕した利便性により、それらを所々置き換えながら社会と生活に変革をもたらしています。
🎄インターネットで起こる問題いろいろ
インターネットは、少なくとも日本では社会のインフラとして捉えられています。しかし集約的に誰かが管理しているわけではありません。日本が無くなってもアメリカが無くなっても部分的な被害のみに留まりインターネットは稼働を続けます。
原理的に、政府も民間も財団もインターネットを管理しきれません。その一部をコントロールすることは可能ですが、脱出するすべもあります。これがインターネット以外のインフラとの大きな違いです。例えば電線が切れたら電力会社が直しますし、水道管が破裂したら水道局が直します。であるなら、インターネットに不都合が起こったときは誰が対処するのでしょうか?
インターネット周辺に発生した事案は例えば以下のようなものです。
- インターネットで誹謗中傷される
- 自分の計算機を利用して仮想通貨をマイニングされる
- 簡単なスクリプトで無害ないたずらをされる
- 個人情報を流用される
- EU一般データ保護規則 - Wikipedia
- 「Cookie利用に同意しますか?」のやつ
- 著作権を侵害される
- 著作権を侵害するような使い方のできるソフトウェアを頒布される
- 未成年者にとって不適切なインターネットコンテンツが見られてしまう
これは、誰がどのように対処すればよいのでしょうか。あるいは、これらのなかで本当に問題のあるものはどれでしょうか。
🎄問題解決する上での課題
・国境がない
インターネットには国境がありません。疎通してさえいれば地球上のどこのサーバーに格納されているコンテンツでも日本から閲覧することができます。であればインターネット上の犯罪はどこでどのように裁けばよいでしょうか。GDPRに違反している日本国内向けのコンテンツをEU加盟国に住んでいる人が利用した場合、どういう扱いになるのでしょうか。
・専門性が高い
インターネットで発生する犯罪を取り締まる団体がいたとして、技術的な知識が欠落していれば誤認が多く発生します。技術倫理的に許される行為であっても不確かな根拠で逮捕されてしまうというケースが日本でも発生しています。
インターネットは身近であるがゆえに近頃はなんだか舐められがちで、システム開発をしている会社の社員ですら技術的に許されない判断をシステム開発時にしてのけます。意識の高い開発者であってもインターネットの仕様や流儀に倣わず独善的なシステムを作ってしまいます。
・開かれているが危険性が認識されていない
インターネットは自由で開かれているので、何の障壁もなく使えてしまいます。しかし例えば誹謗中傷を取り締まる法律はインターネット上には存在できません。国に存在するのみです。誹謗中傷が合法である国もあり得るし、インターネットを使えば誹謗中傷される恐れがあります。その割に危険性を特に認識しないまま誰もがインターネットを使います。
インターネットという危険な道具には免許が不要であるため、危険と思わず使用すれば半ば当然のように犯罪被害に遭います。
🎄解決策を考える
インターネットを安全にするために何ができるでしょうか。
・監視する
日本は中国ではないのでインターネットは検閲されていません。検閲されれば例えばLINEやTwitterでやり取りした秘密の内容を事業者や政府が読むことも可能となります。それにより安全な空間を実現することができるかもしれません。
監視にも段階があり、仕組みとして単純なアクセス遮断等はすでに日本国内でも実施されています。
過去にあった「通信の最適化」問題等、通信の内容を読んで異なる内容に改竄することもできます。例えば「F〇〇K」という文字列が不適切と判断されれば「F××K」と置き換えて送ることもできますし、権力を批判する異分子を見つけて早期にしょっ引くことも可能となります。
誹謗中傷かどうかを間に挟まった団体が検閲し、法的に問題がある言葉を遮断することができるでしょう。それは安全かもしれません。
・免許制にする
「誹謗中傷等はインターネットの原理上ありうる」と認め、その使用を免許制にします。国が人を抑えれば平和なインターネットを作ることができます。
それは無理ですが、特定され得ない誹謗中傷は工夫によりインターネット上で可能であることもまた事実です。
・国営インターネットを作る
インターネットは仕様の集合体であり、仕様に則って自分で作ることができます。今私たちが利用しているのは「一番利用者が多い世界最大のインターネット」にすぎません。
日本が国営インターネットを作ることもできます。そこはインターネットほど自由ではないにせよ法的に守られ平和であるはずです。海外からのアクセス、海外へのアクセスにはパスポートが必要であり、入国審査されるのかもしれません。
🎄つまりインターネットはどうなのか
安全にしようにも限界があるものです。統治に限界がある自由な存在だからこそ、ここまで世界的に広く利用されるようになったとも言えます。安全と自由はトレードオフの関係にあるため、元からあったインターネットに後発で参加してきた我々としては、安全じゃないことに腹を立ててもしょうがないところがあります。
インターネットは自由であるがゆえに混沌としていて危険です。一般的な感覚では調和と安全を何事にも求めるものですが、インターネットはその原理が単純に保たれているため大勢が私利のために使うと混沌と危険を生み出します。
インターネットの歴史的経緯や実装を知らない人からどうしても求められてしまう「健全なインターネット」は存在しえないもので、むしろ「インターネットってなんか危ない気がする」という古臭く聞こえる認識こそ一定の正しさを持っています。
(どこの国でも)無茶な法律でインターネットの在り方を捻じ曲げるような機運もありましたが、根本的には自分たちで望みのインターネットを作るほかないと言えます。作れるから作ればいい。その不自由で安全なインターネットが本当に民衆から好まれるのであれば、今あるインターネットは過去のものになるでしょう。
🎄今後のインターネット
2022年は引き続きWeb3がバズワードとして盛んに扱われ、玉石混交の有象無象が群がった年でした。そのWeb3でも真新しい話は特に出てきません。インターネットの可能性について、資産的価値や見た目の議論ばかりされているように思われます。
日本国と民衆がインターネットに追い付いていないまま、インターネットと人間に対して真剣なものが生み出されていないまま次のWebの話を進められてしまっているような感覚を持っています。地盤も土壌も未完成なまま新天地を求めて不完全なSF話を真剣に議論してしまっているように見えます。
インターネットには人と人とで助け合う仕組みが未だ整備されておらず、国も民間もバラバラで別個に動き続けている現状です。
きっとWeb3も多くの人にとって提供されるものであり、真の意味で参加可能なものにはならないでしょう。特定の企業や国が主導するWebサービスは島にしかならず、島は外部からの要請により法的に治安をコントロールせねばならず、ネットワークとしての本来のパワーはなかなか発揮できません。
🎄おわりに
インターネットは想像以上に身近で、参加可能です。インターネットの利用者は大きく増加しましたが、インターネットに参加する人はまだまだ足りていません。
技術者をしていると、インターネットに興味を持っている人が少なすぎるように感じることが多くあります。エンジニアですらインターネットに興味を持っていないし、身近に感じていなかったりするものです。
人が笑って生きていける世界の実現のため、簡易に参加可能なメタネットワークがインターネットに実現される日を心待ちにしています。それこそ自分で作ればいいのかもしれませんが。