NEXTSCAPE blog

株式会社ネクストスケープの社員による会社公式ブログです。ネスケラボでは、社員が日頃どのようなことに興味をもっているのか、仕事を通してどのような面白いことに取り組んでいるのかなど、会社や技術に関する情報をマイペースに紹介しています。

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僕が会社を大きくしていこうと思ったきっかけ

本記事は、「NEXTSCAPE Advent Calendar 2021」25日目です。

qiita.com

Nextscape 代表の小杉です。

新卒の採用をしていると応募者の方からよく聞かれる質問が2つあります。「創業/起業の理由や経緯」と「会社を大きくしていこうと思ったきっかけ」です。本当によく聞かれるので、このタイミングで書き記しておこうと思います。

3人で始めた会社

Nextscapeという会社は、当時大学にいた先輩2人と僕の3人で作りました。
3人とも大学の研究室に“残留”(泊まり込みで研究や勉強をすることを、僕のキャンパスでは”残留”といいました。)していたとき、社名をどうするかということを考えました。

  1. 一世を風靡していたNetscapeが買収されることになったこと
  2. 我々の研究がInfoScapeというものだったこと
  3. NeXTSTEP OSへのリスペクト

といったことがきっかけとなり、「次の景観(scape)を作るのは僕たちでやろう」という感じでNextscapeという名前を付けました。

Netscapeの買収の時期を調べてみたら1998年の年末ごろで、大学3年のころに先輩たちと会社を作ろうって話をしていたなぁと、懐かしい気持ちで振り返っています。

自らの付加価値向上に注力していた創業当時

さて、そこから登記だとかなんだとかいろいろ手続きなどがあってNextscapeが始まったわけですが、今振り返ると最初の数年間はまったく会社の体をなしてなかったなと思います。3人で始めたのに3人で一緒に何かをやるということがなく、僕は1人でいろんな案件を勝手にやっていた気がします。僕の当時の技術スタックはDB、それもOracleに特化していました。リュックにあの重いOracleのマニュアルを何冊も詰めて、割りばしや2リットルのペットボトルを持って、いろんな企業を回ってはチューニングをしたり、リカバリをしたりしていました。(ちなみに、その時は大学を卒業して大学院生になっていて、金融工学とかも勉強していました。)

そんな時、ひょんなことから、今でも大変お世話になっているタワーレコードさんからお声をかけていただきました。「音楽のことが分かって、モデリングができる人を連れてこい」というオファーだったらしく、知り合いの方が僕を紹介してくださったそうです。その時僕はタワーレコードとHMVの違いも分かっていなかったので、「あのセンター街にあるピンクと黒のお店ですよね」なんて言ってしまって、「それは言ってはダメなやつ」と諭されたりしていました。

そこで、今でいう商品マスターというか、音楽データベースを設計、構築したり、ECサイトのリニューアルのPMをやったりしてました。今でもその時に一緒にお仕事をした縁で何人もの優秀なエンジニアがNextscapeにJOINしてくれています。あの時は(23歳から25歳ぐらいかな)自分でいうのもなんですが、本当に不遜な人間だったなと反省しています。(この辺は去年のアドベントカレンダーに書いたかな?)

当時の僕は、エンジニアとして、PMとして、アーキテクトとして、とにかく自分の評価(この業界で言えば「人月単価」ということですが)、僕自身の人月単価をいかに上げていくかということにしか興味がありませんでした。もちろん、お客様のビジネスに貢献する、というのが前提ですが。当時は、単価200万とか300万とかでやっていたので、どうしたらこれを400万にできるかな、みたいな話です。
そのためには、スキルをとにかく深めること、PMとしての勉強や経験を積むこと、それが自分の未来につながるんだと信じていました。

僕が「DB×PM」というスキルスタックを持つことにしたのも、DBのチューニングに自信を持っていたときに、大学の先輩(優秀なプログラマで大手のSIerに行った方)から「小杉君を一人雇うより、サーバーを買い替えた方が安い」と言われたことがきっかけでした。その時に「高い技術力を持っているからといって常に高く売れるわけじゃないんだ」ということに気付かされたのです。実際、僕がSQLをチューニングして1000倍のパフォーマンスにしても、今ではNVMeやらクラウドやらであっという間に高速化できてしまいますよね。
なので、僕は複数のスキルを組み合わせて、より自分をマーケットに対してスループットが高い状況にしていこうそれが結果として単価400万への道につながるんだ、なんてことを考えていたわけです。

感動を教えてくれた社員

そんな時に、ある社員が入社してきました。4人目の社員です。大学で同期だった松岡というやつです。
今でも覚えていますが、彼の履歴書には、「僕はプログラムは書けませんが、だれとでも仲良くなれます。ゼミの先生からは研究会きっての人格者であるといわれています」と書いてありました。
今、当社に中途採用や新卒採用で難関を潜り抜けて(うちの選考基準は厳しいらしいです)入ってきた社員の皆さんには誠に申し訳ないのですが、プログラムもかけない(つまり、当時のNextscapeではやることもできることも何もない)、社会人経験もない人物を「人格者である」という一点のみで採用してしまいました。
(一応、本人の名誉のために言っておくと、今となってはプロジェクトをやっていくうえで欠かすことができない重要な役割を担ってくれるように成長していますし、活躍していますよ。)

当然入社直後は仕事がないので、彼は、当時3LDKのマンションだったオフィスのお風呂やトイレを掃除したり、お茶碗を洗ったりしていました。(「松岡くん、それは仕事じゃないからね」って言われていましたが、本人なりになにか会社の役に立てることはないかなって考えての行動だったと今は思います。)

当時、Nextscapeはある大手アパレル企業のシフト表を自動作成するシステムを受託していたのですが、「プログラムが書けない松岡にも何か仕事を」と考えた結果、「マニュアルを作って」とお願いしました。ほんとに、ただそれだけのオファーです。
ですが彼は、ものすごく分厚いけれども、よくよく考え抜かれた素晴らしいマニュアルを作り上げました。
当時のお客様の一人からは、「店長の皆さん、このマニュアルはちょっと厚いけれど、日々持ち歩いてほしい。移動の時間とか、ちょっとしたときにこのマニュアルを読めば、よいシフト表を作るためのヒントがたくさん書かれているから。」とか、「普通のITベンダーにマニュアルを作らせると、ただの操作マニュアルしか作ってこない。けれど、このマニュアルはこのシステムをどう使ってよいシフト表を作るか、という視点で書かれている。こんなすごいマニュアルを作ってきた会社は初めてだ」なんて言われました。

僕はこの時、不覚にも泣きそうになってしまいました。嬉しすぎて。感動して。
この喜びは、自分が評価されること、人月単価400万もらうこと、そんなことよりもよっぽど嬉しかったし、価値があることなんじゃないかなって心の奥底から思いました。

その時僕は、「こういう風にお客様から感謝される社員を一人でも多く輩出できるような会社にしていきたい」と思うようになりました。

想いに共感してくれた戦友

そしてそのことを後日、「こんなことがあって嬉しかったんだ、だから僕はそういう考えで会社を大きくしていこうと思うんだ」と坂巻さんに話しました。

坂巻さんというのは、僕が23歳のころに出会った、優秀なプログラマーです。僕は彼と出会ったことでいろんな人生の選択をすることになりました。出会った当時は、僕がDBを彼に教えて、その代わり、彼からは僕にC++を教えてもらう、そんな感じで出会いがスタートしました。ある時、夜中の2時だったと思います。僕も坂巻さんも勉強をしていました。教わったばかりのC++のことを聞いたり、SQLのチューニングの質問なんかを答えたりしていたと思います。そして、「そろそろ寝ますね」ってメールをしたら、「僕はもう少しやっていくよ。お疲れ様」ときました。その時僕は、自分よりもできる人が自分よりも努力していたら永遠に追いつけないと思い、そのことを坂巻さんに伝え、「僕ももう少しやっていきます」と伝えました。そしたら、「小杉君は偉いね、普通、そんなこと言わないよ」なんてことを言われたことがあります。それからは、勉強はもちろん、一緒に仕事をするうえでも、彼が僕と一緒に仕事をしたい、と思ってもらえるように、思ってもらえ続けられるように、と今でも思っています。そんな人です。

それから20年以上、僕がPM、全体のシステム化の方向性を決め、彼がそれを実現していく、そしてお互いの共通の認識はデータモデルで確定する、そんな感じで仕事をしています。ちなみに、坂巻さんは僕からSQL、SQLチューニング、データモデリング、などなど、多くのものを吸収して一線で活躍していますが、僕はついぞ、C++を修めることはできなかったのは秘密です。C#が出てきたから、ということにしておいてください。

当時坂巻さんは、とある事情があって「僕は自分のプログラマーの腕には絶対の自信を持っている。くいっぱぐれることはない。だから、もう、誰かを信じて一緒に会社をやるとかそういうことは二度としたくない」と言っていました。そんな彼が、僕の考え方、自分の単価よりも顧客に感謝される社員、という風に変わったのを聞いて、「本当に小杉君がそう変わるんだったら僕の力を貸すよ」と言ってくれました。自分の考え方や姿勢を変えると、周りが変わっていく、よく言われることですが、本当にこんなことがあるんだなって思います。

Nextscapeを大きくしていく理由

Nextscapeの社員はみんな顧客の価値向上のために日々、努力しています。そんな社員ももう、100人ぐらいになってきて、そういう社員が徐々にでも増えていけばIT後進国なんて言われている日本も変えていける会社になるんじゃないかなと思います。

そのためにも社員一人一人のらしさや強みをちゃんと見極めながら一緒に成長し、それが結果として会社の成長につながり、Nextscapeの成長が顧客のためになり、社会のためになっていく、だから僕は、会社を大きくしていく必要があるんだ、と思うわけです。