NEXTSCAPE blog

株式会社ネクストスケープの社員による会社公式ブログです。ネスケラボでは、社員が日頃どのようなことに興味をもっているのか、仕事を通してどのような面白いことに取り組んでいるのかなど、会社や技術に関する情報をマイペースに紹介しています。

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アジャイルマインドについて

 

こんにちは、ネクストスケープの社長室の中川です。

この記事は「NEXTSCAPE Advent Calendar 2021」の17日目の記事です。

弊社では「アジャイルマインド」を大切にしていますが、今回はその「アジャイルマインド」を持つためにしている工夫などを書きたいと思います。

はじめに

 昨今のシステム開発においては、要件の不確実性や変化への対応からアジャイル開発が重視されてきております。弊社でもスクラムなどのアジャイル開発でプロジェクトを進めることが多いです。アジャイル開発を実施するには、その手法やツールも大事ですが、その前にアジャイルマインドを持った自律化されたメンバーからチームを構成することが重要であると当社は考えています。
  アジャイルマインドをメンバーにどうやって持ってもらうか、維持してもらうか、当社での取り組みについて書かせていただきます。

アジャイル開発のおいて大切なこと

  アジャイル開発を進めるにおいて、「アジャイルはなんでもうまくいく “早い、安い、うまい”ではない。まず、お客様にアジャイル開発の進め方を学んでもらうことが大事だ」ということを主張する人がいます。
 それも重要なことですが、この主張は、開発者側からの少しの甘えた視点のような気がします。アジャイル開発の本質は、「もっと私たち開発者に任せてもらえれば、もっといいものできますよ。」だと考えています。任せてもらう権限をもらう。その代わりに技術者としての責任を果たす義務も持ちます。
アジャイル開発を行うチームのメンバーが自律化したメンバーで構成されていること。それが、アジャイル開発成功の第一条件ではないかと思います。

  当社では、米国プロジェクトマネージメント協会が策定した知識体系であるPMBOK®に準拠したプロジェクトマネージメント講座を実施しています。その中で、受講者から、「アジャイル開発においては、PMBOK®のプロジェクトマネージメントの知識など不要になるのですか?」という質問が出ます。それは、違います。従来のウォータフォールモデルの開発においては、プロジェクトマネージャがプロジェクトマネージメントの知識を知っていればよかったのかもしれません。しかし、アジャイル開発においては、チームメンバー全員が、プロジェクトマネージメントの知識を保持していることが必要なのではないでしょうか。アジャイル開発は、実は、開発者にとっては、厳しいものなのです。開発者が、設計書に書かれているとおり(または“だけ”)のコーディングを行い、プロジェクトマネージャやリーダに指示されたとおりにタスクをこなしているだけでは、アジャイル開発は成功しないと思います。 ですので、皆様にプロジェクトマージメントの講座を受けてもらうようにしていますが、そのほかにも自律化したチームになるために、工夫している取り組みを書きます。

whyの共有

 サイモン・シネック氏が提唱するゴールデンサークル理論はご存知でしょうか。人はwhat(何を)やhow(どのようにして)の前にwhy(なぜ)によって動くというものです。

 私たちは、プロジェクトに新しく参画したメンバーに対して、そのプロジェクトの背景を、しかもなるべく大きなところから話すようにしています。例えば、農業のIT化のプロジェクトであれば、担い手の不足、生産性の向上、フードロスの削減、農産物輸出促進などのわが国が農業分野で直面している課題や目標を。輸出、輸入の関連のプロジェクトでは、中国、韓国、シンガポールといった港に比べて、規模や利便性などで見劣りしている我が国の港の問題などについても話します。自分たちも、国や社会をよくすることに貢献しているのだ、というくらいの肝をもってもらいたいと考えています。

システム開発においては、大規模になると、プログラムを開発するメンバーには、そのプログラムが何に役立つのか、自分の仕事は何のためなのかということがあまり分かりません。それが、分からない状態では、モチベーションは生まれません。プロジェクトの目的を理解し、その中での自分のタスクが最終的にどのように役立つのかが理解できれば、モチベーションもあがり、生産性や品質の向上につながるのではないでしょうか。

 逆に、このあたりの説明がうまく伝わっていない場合は、なかなかモチベーションを持ってもらうことができないこともあります。

 長期にわたるプロジェクトについては、開発者の視点からも、改善したり追加したりするべきポイントを出す議論に参加してもらいます。プロジェクトへの関与度を高めることが、価値を提供できる源泉となります。

 

 whyを見つけるために

 

新しい顧客(引き合いが来た時の見込み顧客も含む)のことを知るために、顧客のサービスを体験したり、顧客と同様のことをしたりする以下のような試みを行ってます。

・引合いのあった顧客のサイトで買い物する。

・化粧品の対面販売についての引き合いがあった時行ってみる(実施してみたのは男性社員)。

・顧客である小売業での店舗や倉庫での業務の体験。

・農業関連のシステムを理解するため、農業体験をさせてもらえる近郊の農園に出向き、農作業を実施。田んぼを借りて稲作の実施、センサーなどのIoTデバイスの試用。

 さらに、顧客のwhyを見つけられるように、業界動向を知る外部セミナーへの参加などを行っています。業界紙の購読、関連の図書購入も積極的に行っています。

 業界のことを勉強するために、業界特有の業務や専門知識を習得できる資格の取得に挑戦することもあります。そのドメインのことを知るためには、結局その分野での資格を取得するのが、包括的かつ効果的に知識を習得できる手段であることが多いのです。
 もちろん、当社では、ITに関する資格の取得も推奨してます。資格取得は多くの場合、試験を受験することになります。ですから、試験に落ちることもあります。それを恥ずかしいと思い、受験をためらう人も多いのではないでしょうか?当社では、落ちることは恥ずかしいことではないと常に発信しています。むしろ、受験しないことのほうが恥であると。会社としては、なるべく多くの試験で受験料などを負担するようにしています。合格すれば一時金の出るものもあります。
 受験する際は、なるべく宣言することを勧めています。受験することを知らせると、実は受験経験者などが、試験の情報などをおしえてくれたりするのです。社会人の受験は予告受験がいいと思います。

  権限委譲と実力の確定

  多くの企業で実践されているように、当社でもマネージャとメンバーの1on1ミーティング(上司と部下が1対1で行う面談)を実施しています。1~2週に1度の頻度で約30分設けるようにしています(なるべく1週間に一度で実施することが望ましいと考えています)。1on1ミーティングとは何でしょうか?当社では、「1on1 はついた実力の確定の場である」としています。

 アジャイルを実践するためには、チーム、メンバーへの権限委譲(empowerment)を進めることが重要です。
 当社の基本は、何かを実施するのに、「細かく上長の指示や承認を取らなくてもいい、正しいと思ったことを実施してください、間違っている場合は、すぐに言いますから。」と伝えています。

 一方で、権限移譲されて自分でやってみた時に、「本当にこれで正しかったのだろうか?」と、逆に不安になるときもあるのではないでしょうか。

 そこで、1on1で、権限委譲されて実施していることが正しくできているということを、改めてしっかりと伝え、自分がやったことは正しいのだということを再認識させます。そして自信を持ち、それが自分の確実な実力になるように確定してあげるのです。やってはいけないことを正すことは大事で、1on1 の場ではついついそういうことは伝えなければと思って話をしてしまいますが、逆に、ちゃんとできていることの確定というのは意外とされていないのではないでしょうか。

 権限委譲と実力の確定の場をセットとすることで、繰り返し実行できる本当の実力になると考えています。
 

メンバーの目標設定と振り返りをチーム全体で実施

 当社でも、四半期毎に個人毎の目標設定と評価があります。期初に目標設定シートを記載し、期末にそれに対する評価を行います。この目標設定をチームのメンバー全員の会議でそれぞれが発表でして共有をします。通常、目標設定と評価は評価者である上司と被評価者である部下で行う形が多いと思いますが、その2者間だけでは、気づかないこともあるのではと思います。それをチームメンバー同士で議論することにより、自分や管理者だけでは気づかなかったメンバーからの期待感、やるべきタスク、優先順位が分かることがあります。
 評価時も同様です。自分が立てた目標について、その期間の中について、できているのかをチームメンバー全員で議論します。

 評価の時には、アジャイル開発で利用されるKPTフレームワークを使います。Keep(よかったところ), Problem(悪かったところ) , Try(次への改善)という観点で目標を整理します。まずは、Kからスタートします。意外と自分では気づかないKもあるのです。周りのメンバーから、Kを受けることにより、Problemに対する改善であるTryも前向きに捉えられることができると思います。メンバーもそれぞれのKeepを探す必要があり、そのためには、メンバーの行動を見ていている必要があります。自分のやることだけ考えていればよいということだけでなく、チームの中で、誰が何をするのが良いのか、という全体最適をみんなで考えることができます。

 チームのアジャイルマインドを保つためには、メンバーのことをお互いに理解しあうことも大切です。メンバーのことお互いにを知るために、生まれた時からの過去、現在、そしてありたい、なりたいと考えている未来を書き、それを発表しあうような場も作っています。そうすることで、各人の発言や行動の基となるその人のバックボーンを理解することができます。ネガティブな発言、厳しく言及するポイントは人によって異なり、それが元になってチームの結束にひびが入ることもあると思います。メンバーの考えの背景を含めて理解しあうことで、なぜそういう行動につながるかを理解することにつながり、メンバー間の衝突を回避して、チームの結束力を高めることに役立ちます。

 

おわりに

この他にも様々な取り組みをして、アジャイルマインドを維持、醸成できるようにしています。

 

 今、当社では、「アジャイルマインド」について、会社全員が、グループに分かれて、ディスカッションを行うということをやっています。 アジャイルマインドとは何か、それを保つためにはどうすればいいのか、また新たな考えが出てくるのではと楽しみにしてます。

 最後に。

「Don’t do agile. Be Agile.」(アジャイルをするな、アジャイルであれ。)