NEXTSCAPE blog

株式会社ネクストスケープの社員による会社公式ブログです。ネスケラボでは、社員が日頃どのようなことに興味をもっているのか、仕事を通してどのような面白いことに取り組んでいるのかなど、会社や技術に関する情報をマイペースに紹介しています。

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年末年始に読むオススメ本

こんにちは。 Sitecore MVP の長沢です。
この記事は「ネクストスケープ クラウド事業本部 Advent Calendar 2017」の 21日目 の記事です。


先日、大掃除もかねて家の本棚を整理したのですが、ついつい整理しながら本を読み返してしまい、結局ほとんど整理はできませんでした。
せっかくの作業を無駄にしてしまうのも、もったいな気がするので、今回は、本棚の整理をして再発見した、面白い本をいくつか紹介したいと思います。
なるべく超有名な本は避けました。また、役に立つことよりも読んでいて面白いことを重視して選んだので、そこそこユニークなラインナップになったと思います。
もうすぐ年末年始の休みに入るという方も多いと思いますので、年末年始の暇つぶしにぜひ活用していただければ嬉しいです。
(ブログのネタがなかったので、無理やり年末っぽい話題でネタを作ってみました。。。)


オススメ本その1 : Scheme手習い

Scheme という言語を使った、再帰についての本です。決して難しい本ではない(かといって簡単でもない)のですが、最後の方では情報数学の領域まで話が広がっていきます。私にとっては、プログラミングの楽しさや奥深さを学んだ本です。
Scheme については、知らなくても読める内容ですが、基礎文法を知っていたほうが読みやすいかもしれません。
もし、Scheme について学ぶ場合、まじめに学ぶのであれば、R7RS という最新の仕様を元に勉強をするほうが良いのですが、簡単に学びたいということであれば、仕様のコンパクトさや、情報の集めやすさから R5RS という少し古い仕様をもとに勉強することを個人的にはオススメします。検索すれば、有志による日本語訳も入手できるかと思います。


オススメ本その2 : Hacking:美しき策謀 第2版 ――脆弱性攻撃の理論と実際

脆弱性攻撃についての具体的な手法を解説した本です。
知的な好奇心を満たしてくれる内容であるとともに、低レベルに関する知識を深める本としてとても面白かったです。
私が読んだのは、第1版なのですが、第2版では大幅にボリュームアップしているようです。機会があれば第2版の方を読み直してみようと思います。


オススメ本その3 :プログラマが知るべき97のこと

様々な著者が書いた 97 本 (と日本語版のために追加された 10 本) の短いエッセイがまとめられた本です。
テーマもあまり統一されておらず、それぞれの著者が大事だと思った様々なことが書いてあります。
しいて言えば、自分の失敗から学んだことを書いたものが多かった印象ですね。
若干、古めの本なのですが、疲れたときに読むと元気になれる本です。


オススメ本その4 :21世紀の貨幣論

仮想通貨が話題になっている頃に、いくつか仮想通貨に関する本を読んだのですが、正直言って全く理解ができませんでした。
技術的な仕組みが分からなかったというよりは、「なぜそれがお金として機能するのか?」「なぜそれを作ったのか?」といった、発明の背景に関する知識が不足していました。
この本は、お金自体についての歴史や考察が行われています。仮想通貨に関しては、まったく触れられていないのですが、私が仮想通貨について理解するうえで最も参考になった本です。
また、読み物としても大変面白かったです。


オススメ本その5 :教養としての認知科学

ここ数年で、機会学習や AI という言葉は、ほんとによく耳にするようになったと実感しています。
そんなブームの中で、個人的に気になっているのが認知科学という分野です。
認知科学を一言でいえば、知性とは何かを研究する学問だと理解しています。
ただ、認知科学はとても学際的で、哲学、心理学、計算機科学、人類学などなど・・・関連する分野を挙げてゆくのも大変なくらい広い領域を対象にしています。
私をはじめ専門外の人間にとっては、何から始めてよいか途方に暮れてしまいます。
この本は、そんな認知科学という分野をわかりやすく解説してくれている本です。興味のある人は、まずはこの本から読み始めると良いのではないかと思います。


以上、5冊を紹介しました。いかがだったでしょうか。

今回、本棚の整理をしてみてうれしかったことが一つあります。
IT 業界では、よく知識が陳腐化するスピードが速いといわれます。
しかし、家の本棚を見てみてみると、その有効性を失ってしまった本は、ほとんどないと感じました。
その発行から 20 年以上が経っている本たちでさえも。

SICP で得た洞察は、今もプログラマーとしての基礎となっています。
コードの書き方に迷ったとき、まず考えるのはコードコンプリートでどのような記述がされていたかです。
GoF のデザインパターンは今後もプログラマーにとっての教養であり続けるでしょう。
また、人月の神話で提示された問題は、いまだに開発の現場にとっての主要な問題であり続けています。(原文初版からはすでに 40 年以上が経過しています。)

現代において、K&R からプログラミングの勉強を始める人は少数派かもしれません。
しかし、新しいことを誇り、古いことを恥じるような傾向がある IT 業界においても表面的な技術や道具立ての違いを取り去ってしまえば、時間的な変化の度合いは意外と小さいのかもしれません。
それは喜ばしいことのように感じます。なぜなら、変化のスピードが遅い領域では、時間をかけて発展させてゆくことが許されるからです。
変化の速いといわれるこの業界にも、時間をかけて取り組むべき領域が見出せそうなことを、とても嬉しく感じました。

それと同時に、新しいことを次々と取り入れて行く柔軟さと、長い時間をかけて物事に取り組む我慢強さの2つを両立させることの難しさを考えて思わずため息が出てしまいました。

それではまた。