NEXTSCAPE blog

株式会社ネクストスケープの社員による会社公式ブログです。ネスケラボでは、社員が日頃どのようなことに興味をもっているのか、仕事を通してどのような面白いことに取り組んでいるのかなど、会社や技術に関する情報をマイペースに紹介しています。

MENU

IoT新規事業を形にする最初のステップ

事業計画とプロダクトコンセプト設計

はじめに:情熱と覚悟が不可欠な新規事業

IoT市場は成長を続け、無限の可能性が広がっています。
しかし、IoT事業を立ち上げ、継続して成功させるためには、単なるアイデアや市場分析以上に重要なものがあります。それは、「自分自身がそのコンセプトやニーズを心の底から信じられるか」という覚悟です。

ビジネスの成功は、アイデアの質だけでなく、それを信じ、貫き通す情熱にかかっています。この覚悟がなければ、立ち上げには成功しても、常に発生する想定外の問題や壁にぶつかったときに継続できません。少なくとも5年10年と継続する覚悟が必要になります。
この記事では、その覚悟を持つために考えるべきことと、実現に向けた最初のステップについて、お伝えできればと思います。

自分が本心から信じられるアイデアとは何か

自分の価値観とアイデアの一致を見つめ直しましょう。
新規事業を立ち上げるとき、まず重要なのは「そのアイデアが自分自身の価値観と本当に一致しているか」を問いかけることです。

例えば、私がAlterLockを立ち上げたとき、出発点にあったのは「ロードバイクの盗難の不安を解消して、安心してサイクリングをできるようにしたい」という想いでした。
自転車を愛する人にとって、盗難の被害は単なる物の損失ではなく、大切な時間や体験を奪われることです。絶えず付きまとう不安は少なからずサイクリングの可能性を狭めています。その課題をITやIoTの力で解決したいという情熱が、事業を進めるエネルギーとなりました。

アイデアを練る際には、次のような質問を自分に投げかけてみてください:

  • その課題を本気で解決したいと思えるか?
  • 自分自身がその課題に直面したとき、どう感じるか?
  • 解決に向けてのアイデアを語るとき、他人に情熱が伝わるか?

このプロセスを経て、心の底から信じられるアイデアが見つかったとき、ただの「ビジネスチャンス」ではなく、人生の一部として事業を推進していく覚悟が持てるでしょう。

事業計画を立てる

対象となる市場、ユーザー、製品の差別化

ターゲット市場を明確にする

アイデアを具体化するには、ターゲット市場を絞り込むことが欠かせません。ターゲットが漠然としていると、どんなに優れたプロダクトも市場で埋もれてしまいます。

具体的なペルソナを設定する

AlterLockの場合、「ロードバイクに情熱を持つサイクリスト」「サイクリング、ロングライドやレースなどで使う愛車を大切にしている人」など。

顧客のニーズをデータで裏付ける

アンケートやSNS、オンラインフォーラムを活用して、どの課題が実際に重要視されているかを調査します。

競合分析を行い、差別化ポイントを明確にする

次に、競合製品を徹底的に調査し、どの部分で優位性を持てるかを明らかにします。競合がすでに存在する市場であれば、「どう差別化するか」「どこに優位性があるのか」が成功の鍵です。

市場にまだ存在しないカテゴリの製品であれば、類似する製品やそれらの課題点、どのように価値を伝え市場を作っていくのかも考える必要があります。

プロダクトコンセプト設計:顧客のニーズに応える形を具体化する

ユーザーインタビューでリアルなニーズを掴む

情熱を持って取り組む課題であっても、実際に顧客が何を求めているかを確認する作業は必須です。自分の想いだけで突き進むと、市場からズレた製品ができあがるリスクがあります。具体的には以下のような方法があります。

  • 現場の声を直接聞く:ターゲット顧客に実際に会い、彼らの課題や日常のプロセスを深掘りする。
  • リアルな課題を把握する:「盗難が不安」といった抽象的な意見を、実際に「どのような状況で」「何が解決策となるのか」に落とし込む。
IoTならではの付加価値を検討する

IoTデバイスを使うことで、どんな「特別な価値」を提供できるかを考えます。
競合が単なるGPS機能を提供しているなら、そこに「アラーム」「即時通知」「アプリで見守る」など、付加価値を加えることで差別化することができます。

ビジネス規模や価格を考える

新規事業におけるビジネス規模や価格設定は、単に数字を決めるだけではなく、顧客の視点や市場の現実を反映した戦略が求められます。

ターゲット市場の規模を見積もる

まず、自分の製品やサービスがどれくらいのユーザーにリーチできるのか、現実的なターゲット市場の規模を見極めましょう。

価格設定の重要性

価格は市場における成功を左右する重要な要素です。「高すぎても買われない」「安すぎても価値が伝わらない」というバランスが存在します。

顧客目線の価格設定

顧客に「この価格なら買いたい」と思える価格帯を探るため、PSM分析(価格感度測定)などの手法を活用しましょう。
実例で考えると、1万円なら10万人が購入する可能性がある製品も、2万円では100人、1000人しか買ってくれないかもしれません。このようなシミュレーションを通じて、最適な価格帯を決定します。

原価とのバランス

価格設定にあたっては、開発・製造・流通にかかるコストを正確に把握し、利益が確保できる価格にすることが必要です。

マーケティングについて考える

次に、自分の製品をターゲットとなる顧客にどう届けるかを考えます。マーケティングは単に広告を打つだけではなく、製品を正しく理解してもらい、価値を伝えるプロセス全体を指します。

顧客に認知してもらうための道筋を描く

マーケティングの第一歩は、自分の製品をどのように顧客に届けるかを設計することです。

販売チャネルの選定

オンライン販売(ECサイト)だけでなく、実店舗や代理店での販売も検討し、最適なチャネルを見つけます。販売店の意見を聞きながら、どのような流通ルートが適切かを模索しましょう。

顧客目線での販売体験の設計

顧客が製品を購入する際に、スムーズかつ満足度の高い体験ができるようにすることが重要です。例えば、WebサイトのUXや店舗でのPRなどを工夫します。

プロモーションのアイデア

現代ではSNSやWeb広告を活用することが不可欠です。そういった部分を外注できるサービスも多数存在します。しかし、IoT製品のようなニッチな市場では、発案者自身が情報を発信し、対象となるユーザー層に認知を広げていく活動も重要です。

  • SNSの活用:XやInstagramを通じて、顧客との直接的なコミュニケーションを図ります。
  • 動画コンテンツの制作:YouTubeやPR動画で製品の価値を視覚的に伝えると効果的です。
  • 業界メディアの活用:業界向けWebメディアや雑誌に広告を出稿し、業界自体や顧客層にアプローチします。
  • インフルエンサーとのコラボ:ターゲット顧客層に影響力のあるインフルエンサーと提携し、製品の価値を伝えます。
マーケティングの知識を広げる

技術者にとってマーケティングは馴染みが薄い分野かもしれませんが、専門外の分野を学ぶことはビジネス成功の鍵となります。

  • 展示会やセミナーに参加する:大規模な広告・マーケティングの展示会では最新のトレンドや実践例を学べます。
  • ツールの活用:デジタルマーケティングを効率化するツール(Google Ads、SEO分析ツールなど)を試してみましょう。Googleだけでなく、ChatGPTやPerplexityなどのAIツールも情報収集に活用できます。

製造をどう進めるか

IoT製品の場合、クラウドサービスやスマートフォンアプリなどのソフトウェアだけでなく、ハードウェアや通信モジュールも必要になるため、専門的な知識やパートナーシップが重要です。

製造のパートナーを探す

多くのIoT事業を行う企業は、自社内で全ての開発・製造プロセスを行うのではなく、専門企業と提携しています。特に以下のポイントを考慮しながら、適切なパートナーを見つけましょう。

  • 製品設計のノウハウ:金型設計、筐体の強度、防水構造など、製品を量産するための設計ノウハウと実績がある企業を選ぶ。
  • 通信開発のノウハウ:Bluetooth, Wi-Fi, GPS, LTE-M, アンテナ設計などの通信部分の開発をスムーズに進められる企業を選ぶ。
  • 通信規格と認証の対応:技適認証、Bluetooth SIG、海外展開時する場合は各国の認証規格に対応できるパートナーが必要です。
  • 量産品質:量産を行う際にも特有のノウハウがあり、高い量産品質を確保するための様々な試験設備や経験に基づいた手法があります。
展示会での情報収集

製造業界には多くの展示会があります。IoT開発や通信技術に特化した展示会に参加することで、最新の技術情報を収集し、製造業者との関係を構築することができます。

自社製品の製造に強みを持つ企業を見極める目を養うと同時に、そこで得た情報や人脈がパートナー探しに繋がり、製品開発の成功につながります。

アイデアと情熱を持つ人を応援します:ぜひ相談を!

もしあなたが、情熱と覚悟を持ち、本心から実現したいアイデアがあるならば、ぜひ一歩踏み出してください。
私たちも同じように試行錯誤を重ね、失敗と成功を繰り返しながら事業を形にしてきました。

また、「自分のアイデアが本当に価値があるのか」「次のステップをどう踏めばいいのか」という悩みを抱えているなら、ぜひ相談してほしいと思います。
一緒に課題を深掘りし、解決の糸口を見つけるお手伝いをしたいと考えています。

新規事業を形にするためには、何よりも「その課題を解決したい」という情熱と覚悟が必要です。そして、その情熱が周りの人々に伝わるとき、初めて事業は動き始めます。

あなたの情熱が、まだ誰も気づいていない課題を解決し、世の中を少しでも良くする力になることを願っています。